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【脱・カン頼り】今日からできる!経験値に頼らないロジカルな故障診断術 ~「診断に自信がない」中堅整備士へ送る実践的な教科書~
1.はじめに
「今日もまた診断に3時間も取られちゃったよ…」
「蓋を開けてみたら配線の接触不良だったって、なんで最初に気づかなかったんだろ」
そんなことってありますよね。
最近の車、本当にややこしくなってきてません?
昔みたいに「音でなんとなく分かる」とか「触った感じでピンとくる」みたいなのが通用しなくなってきました。
電子制御だらけで、正直ついていくのが大変です。
整備士になって3年、5年と経つと、基本的なことは一通りできるようになったけど、複雑な故障になると途端に「うーん…」って悩んじゃいませんか?
診断に時間ばっかりかかって、効率悪いなぁって思うことも。
でも大丈夫。実は、ちょっとしたコツと手順を覚えるだけで、診断って格段にやりやすくなるんです。
この記事では、現場ですぐに使える実践的な診断のやり方をお話しします。
難しい理論じゃなくて、明日から使えるテクニック中心でいきますので、ぜひ参考にしてみてください。
2.お客さんとの話の聞き方
まずは情報収集が一番大事
診断って、最初の情報収集でほぼ決まるって言っても言い過ぎじゃないと思います。
お客さんからちゃんとした情報をもらえるかどうかが勝負の分かれ目ですね。
ここでのコツは、ぼんやりした質問じゃなくて、具体的に聞くことです。
いつから調子悪いの?を上手に聞く
あんまり良くない聞き方
「いつ頃から調子悪いんですか?」
こう聞いた方がいい
・「前回オイル交換してからですか?」
・「車検受けた後からですか?」
・「タイヤ替えてからですか?」
何か作業した後とか、分かりやすい出来事と結びつけて聞くと、お客さんも思い出しやすいし、故障の原因も見えてきやすいです。
どんな時に症状が出るかを探る
あんまり良くない聞き方
「どういう時に変な感じになりますか?」
こう聞いた方がいい
・「信号で止まってる時だけ、エンジンルームから音がしますか?」
・「エアコン入れた時だけですか?」
・「朝一番にエンジンかける時だけですか?」
具体的な場面を想定して聞くと、関係ありそうなところが絞り込めます。
どんな状況で起こるかも大切
あんまり良くない聞き方
「どんな時に起こりますか?」
こう聞いた方がいい
・「雨の日だけですか?」
・「寒い朝だけ?それとも暖まってからも?」
・「高速だと大丈夫ですか?」
ちょっとしたコツ
お客さんと話す前にメモ帳に、
「いつから・どんな操作・どんな天気・症状の詳細」
と書いておいて、全部聞くようにしてます。
意外と聞き忘れがなくなりますよ。

3.論理的に診断を進める方法
基本の流れはこの4つ
感覚だけに頼らないで、順番を決めて進めていきます。
1. 情報を集める
↓
2. 原因を予想する
↓
3. どれから確認するか決める
↓
4. 実際に確認してみる
実際の例で考えてみる
例:「2週間前からエアコン入れると変な音がする」
こんな時は、こう考えます:
予想その1: コンプレッサーのベアリングがダメ(可能性:高そう)
・確認方法:アイドリングでエアコンON/OFF切り替えて音の変化を見る
予想その2: ベルトが緩んでるか傷んでる(可能性:まあまあ)
・確認方法:ベルトの張りと表面をチェック
予想その3: 電磁クラッチの調子が悪い(可能性:まあまあ)
・確認方法:クラッチが動く音とくっつき具合を確認
どの順番で確認するか決めるコツ
・簡単にチェックできるものから(工具いらずでできるか)
・よくあるトラブルから(今まで経験したことあるか)
・安い部品から(高額修理になりそうなのは後回し)
ちゃんと確認できる予想を立てる
ただの勘じゃなくて、
「こうだったら、こうやって確かめられる」
という感じで予想を立てるのが大事です。
良い予想の例
・予想:「エンジンマウントがヘタって、アイドリングで振動してる」
・確認方法:回転数上げた時の振動の変わり方と、マウント部分を見る
4.診断機器をうまく使う
スキャンツールは読むだけじゃもったいない
エラーコード見るだけじゃなくて、データをちゃんと分析すると診断の精度がぐっと上がります。
実際に数値を見るポイント
O2センサーの場合
・正常:0.1V〜0.9Vでちゃんと上下してる
・おかしい:0.5V辺りで止まってる、動きがバラバラ
・チェックのコツ:アイドリング時と2000回転時、両方で見る
エアフロー(MAF)センサーの場合
・アイドリング:だいたい2〜7g/s(排気量で変わる)
・急加速時:ちゃんと反応するかも見る
・チェックのコツ:スロットルをパッと開けた時の追従性を確認
エラー履歴も意外と大事
「1回だけ出たエラー」も馬鹿にできません。
たまに出る故障とか、いくつかのシステムが絡んでる問題を見つける手がかりになったりします。
症状の再現
お客さんの話した条件でちゃんと症状が出るか確認できれば、診断の確度がかなり上がります。

5.よくやっちゃうミスと対策
決めつけは禁物
「前もこんな症状でタイミングベルトだったから、今回も多分それだろう」←これ、危険です。
対策: 毎回ちゃんと3つくらいは原因候補を考えてから確認に入る習慣をつけましょう。
複数の原因が重なってる時
一つの症状に、いくつかの原因が絡んでることもあります。
よくある例
・症状:エンジンの振動
・原因:エンジンマウントのヘタリ(7割)+ 点火系の不調(3割)
・対策:メインの原因を直した後、症状が完全に治るか必ず確認
時間の使い方
だいたいの目安
・最初の聞き取り:10分
・原因予想と順番決め:5分
・基本チェック(見て触って):15分
・スキャンツール:15分
・詳しい調査:30分〜
要注意サイン 45分経っても原因が絞れない時は、一回立ち止まって違う角度から考え直した方がいいです。
6.技術を磨き続けるために
記録をつけて振り返る
診断した内容は記録に残して、月1回くらいは見返しをしてます。
記録する内容
・症状と最初に考えた原因
・実際の原因
・診断にかかった時間
・今回学んだこと
周りの人との情報交換
ベテランの先輩から盗む
診断してるところを見せてもらって、
「なんでそう思ったんですか?」
と聞くようにしてます。
後輩に教える効果
自分が知ってることを後輩に説明すると、自分の理解も深まります。
教えることで気づくことって結構あるんですよね。

7.まとめ:今日から始められること
大事なポイントをおさらい
- 聞き取りが一番重要 - 具体的に質問して正確な情報をゲット
- 順序立てて進める - 4つのステップをちゃんと踏む
- データをしっかり見る - スキャンツールを使いこなす
- 記録して改善 - 振り返りでどんどん上手くなる
明日からできる3つのこと
その1:質問の仕方を変える
- いつものお客さんへの質問に、具体的なのを2つ追加してみる
- 「○○の作業した後からですか?」
- 「△△の時だけですか?」
その2:原因を予想する習慣
- 診断始める前に、原因の予想を3つメモに書く
- 可能性高い順に番号振る
- どうやって確認するかも一緒に書く
その3:記録をつけ始める
- 診断結果を必ず記録する
- スマホのメモでも手帳でも何でもOK
- ¥月末に見返して、パターンを見つける
8.おわりに
続けることが一番大事です。
一回一回の診断を大切にやって、そこで覚えたことを次に活かす。
そうやって積み重ねていけば、どんなややこしい故障でもちゃんと対処できる整備士になれます。
「なんとなく」の診断から「ちゃんと根拠のある」診断へ。
ぜひ今日から試してみて、自信を持って故障診断に取り組んでください。応援してます!
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