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「もっといいクルマづくり」その裏にある2つの"悔しさ" 新型スポーツ車両ワールドプレミア

2025.12.09

式年遷宮という言葉がある。

定められた年(式年)に神の住む宮を遷す(遷宮)儀式で、伊勢神宮では1300年前から20年に一度行われる神事だ。

伊勢神宮では、式年遷宮の意義を「日本の歴史や先人たちの心などは、決して捨て去ることはできません。未来に残さなければならないものを守り続ける。それは変えること以上に難しく、大切なことなのです」と説明している。

では、トヨタにとっての“式年遷宮”とは何か?

トヨタのクルマ情報サイト「GAZOO.com」で、モリゾウこと豊田章男副社長(当時)はこう語る。

スポーツカーの開発は、伊勢神宮の「式年遷宮」みたいなものだと思います。

(中略)

1967年、トヨタは2000GTや1600GTなど、多くのスポーツモデルを送り出しました。

その時の若手メカニックのひとりが、成瀬(弘)さんです。

それから40年、成瀬さんは棟梁となって、若いエンジニアやメカニック、ドライバーに技術と技能の伝承を行っています。

時代が悪いから、開発をやめると言うことではなく、将来を見据え、こういう時代でも技術や技能の伝承を続けることは、とても大切なことだと思います。

もちろん、20年前にはなかった多くの技術が、このLF-Aには盛り込まれています。

カーボン素材や、時速300kmからでも安全に曲がれ止まれる技術、各種の機能部品など、色々な技術のブレークスルーもたくさんあります。

そんな開発が、今後、さまざまなクルマに活かされていくことを考えると、開発をやめるという理由は、見当たらないように思います。

(2009.5月29日 GAZOO特集「モリゾウのドライバー挑戦記」より『伊勢神宮の式年遷宮…?』)

5日、トヨタはスポーツカー3車種のワールドプレミア(WP)を、静岡県裾野市のWoven Cityにあるインベンターガレージで実施した。
*本記事内の車両意匠は、いずれも現時点のもの。

強さの物語は悔しさから始まる

TOYOTA GAZOO Racingのサイトで、11月27日から始まったカウントダウン。会場のスクリーンに“その瞬間”が表示される。3秒前…2秒…1秒…。

オープニングムービーの後、ステージに上がったのは、サイモン・ハンフリーズChief Branding Officer(CBO)。

迎えるのはジャパンモビリティショー(JMS)2025で展示された「LEXUS Sport Concept」から、名称を一新したコンセプトカー「Lexus LFA Concept」だ。

WPの様子はYouTubeでも生放送された。多くの注目が集まる中、デザインのトップは、2つの屈辱の物語を披露した。

ハンフリーズCBO

 

Good morning everyone.
おはようございます。

Thank you for taking the time and trouble of coming all this way to the Toyota Higashi-Fuji Plant here in Eastern Japan.
本日は、トヨタ自動車東日本の東富士工場にお越しいただき、 誠にありがとうございます。

Now originally, this was a press shop.
元々ここはプレス工場でした。

And as some of you may know, it was the factory where Shoichiro Toyoda and Nakamura Kenya created the first Century in 1967.
そして、ご存じの方もいらっしゃると思いますが、1967年に中村健也さんと豊田章一郎さんが初代センチュリーを生み出した、まさにその場所でもあります。

 

The spirit of invention that was born here is now reborn as the Inventor Garage of Woven City, a facility for creating the future.
ここで生まれた“発明の精神”は、新たに“Woven Cityのインベンターガレージ”として未来をつくる場所に生まれ変わりました。

Now today will be a celebration of not only invention but of something that I know we all love: a celebration of the car.
今日は発明のお祝いだけでなく、私たちが愛してやまない“クルマそのもの”をお祝いする日でもあります。

The excitement, the thrill, the love for speed, all things I think, everyone in this room and everyone watching online shares a passion for.
あのワクワク、スリル、スピードへの愛。ここにいる皆さんも、オンラインで見ている皆さんも、きっと同じ情熱を心に持っていると思います。

But as with many things in life, a story of strength begins with a story of what is called in Japanese kuyashisa--humiliation.
しかし人生と同じく、“強さ”の物語は日本語でいうところの“悔しさ”…「屈辱」から始まります。

And I want to tell you about this from two viewpoints.
2つのお話をさせていただきます。

I have been working as a designer for 36 years, and I can honestly say that as a designer, there is nothing more painful than being told that what you have put your heart and soul into. is boring.
私はデザイナーとして36年間働いてきました。正直に言ってデザイナーにとって自分の“心と魂”を注ぎ込んだものを「つまらない」と言われることほど、つらいものはありません。

14 years ago at Pebble Beach in America, that is exactly what happened when Akio was told on his visit there, “Lexus is boring.”
14年前、アメリカのペブルビーチでまさにそれが起こりました。そこで章男さんは「レクサスはつまらない」と言われたのです。

That feeling of humiliation was a turning point, and it became a source of determination.
その“屈辱”は大きなターニングポイントとなり、強い決意の源になりました。

当時のトヨタは、規模の拡大を追求する中で台数と収益を優先し、販売地域も、車種も偏ったクルマづくりをするようになっていた。豊田会長は2024年1月に行われた講演で「そこには『つくれば売れる』というメーカーのエゴがあったと思います」と振り返っている。

「お金をつくる会社」から「商品で経営する会社」へ。改革の闘いを続けてきた豊田会長。

それから14年。今年のペブルビーチで、もう退屈とは言わせないために、このコンセプトカーをどう見せるのが良いか? と問われた豊田会長の答えはいたってシンプルだった。

 

ただ、そのまま置けばいい

ハンフリーズCBO
After that, Akio stood up and made a promise: “No more boring cars.”
そこから章男さんは立ち上がり「もう二度と“退屈なクルマ”はつくらない」と宣言しました。

So when we went to consult with him about how we would present this car at Pebble Beach this year, his answer was very simple:
なので、このクルマを今年のペブルビーチでどう見せるか彼に相談した時、彼の答えはとてもシンプルでした。

 

“Just put it out there and let it speak for itself.”
ただ、そのまま置けばいい。クルマ自身に語らせればいい。

And that is exactly what we did.
まさにその通りにしました。

With no explanation, we let people form their own opinions.
説明もなく、言葉もなく、ただ自由に感じてもらうだけ。

And I’m very pleased to share that at Pebble Beach this year, not one person said that Lexus was boring!
嬉しいことに今年のペブルビーチでは、誰一人“レクサスはつまらない”と言った人はいませんでした。

 

To be innovative, adventurous, original to help our customers DISCOVER... this is what Lexus was born to do.
革新的であること。冒険的であること。独創的であること。そしてお客様に“DISCOVER 発見”をもたらすこと。それこそがレクサスの使命です。

今年のジャパンモビリティショーにおいて、ハンフリーズCBOは、LEXUS Sport Conceptを「“没入体験”を味わうチャンス」と語っている。

開発にあたっては、どのような挑戦があったのか。

ハンフリーズCBO
And with this car, we wanted our customers to discover a new level of sensory immersion.
このクルマでは、お客様に新たなレベルの“没入感”を体験していただきたいと考えました。

 

For the vehicle behind me, this meant big breakthroughs, dramatic proportions, and packaging innovation.
そのために、大胆なプロポーション、 パッケージの革新が必要でした。

 

Just look at the stance... that rear view... just beautiful. And all under 1,200 mm in height.
スタンスを見てください。リアビューも、本当に美しい。 そして全高は1,200mm未満。

For any sports car, this is a huge challenge and a huge accomplishment.
スポーツカーとして、 大きな挑戦であったのと同時に、大きなことを成し遂げることができたと思っています。

And when this car is finally finished, it will answer Akio’s last request, and that is to completely redefine the sound of an electric sports car.
このクルマの最終的な完成時には、章男さんの“最後のリクエスト”「電動スポーツカーの音を再定義する」という宿題にも応えようとしています。

Now, we designed this car to really speak for itself, but that’s not simply by chance.
このクルマは、まさに“自分自身で語る”クルマです。それは決して偶然ではありません。

Because the car that you see here owes its existence to another story. And that brings me to the second tale of humiliation.
なぜなら、このクルマが生まれた背景にも別の“屈辱の物語”があるからです。

ハンフリーズCBOは一呼吸置き、もう一つの屈辱の物語を始めた。

2つのエンジン音

ハンフリーズCBO
This time on the race track.
今度は、サーキットの世界での話です。

I remember Akio telling me that at Nürburgring 20 years ago, he had an experience that he couldn’t forget.
章男さんが私に話してくれた、20年前のニュルブルクリンクで味わった、決して忘れることのない話です。

It wasn't about being overtaken; it wasn’t about not coming first
単に追い抜かれたとか、勝てなかったとか、そういうことではありません。

Rather, that he could see that other manufacturers were prioritizing racing.
他のメーカーがレースに本気で取り組んでいたこと。

They were using the occasion to nurture not only new technology and new products but to nurture the people who make them.
新しい技術、新しい製品だけでなく、それらを生み出す“人”を育てる場としてレースを活用していたことです。

Camouflaged prototypes of cars never seen before being put through their paces on the world’s most unforgiving track.
見たことのないカモフラージュされた開発車両たちが、世界で最も苛酷なサーキットで次々に鍛えられていたのです。

As a company, Toyota at that time wasn't even trying to build a car capable of racing at the Nürburgring. In fact, we didn't even have a sports car on sale.
当時のトヨタは、ニュルを走れるクルマをつくろうとしておらず、実際、市販のスポーツカーすらありませんでした。

So Akio, alongside test driver Naruse-san, not only ended up driving an old Supra but doing so under the alias of Morizo with his own unknown private team, GAZOO Racing.
だから章男さんは、テストドライバー・成瀬さんと一緒に、古いスープラに乗り、“モリゾウ”という偽名で、しかもプライベートチーム“GAZOO Racing”で走るしかありませんでした。

 

Every time he yielded to yet another development prototype, it was as if they were saying,
何台もの開発プロトタイプに道を譲るたび、まるでこう言われているようでした。

“You guys at Toyota there’s no way you could ever build a car like this!”
「トヨタさん、あなたたちにこんなクルマつくれるわけないでしょ。」

Well that was then. This, is now.
しかし、それは昔の話。いまは違います。

すると舞台袖から2台のスポーツカーが姿を現した。GR GTとGR GT3(いずれもプロトタイプ)だ。

TOYOTA 2000GT、Lexus LFAに続くフラッグシップに位置づけられる。V8エンジンの音が会場に響き渡った。

 

響き渡るV8エンジン

 
写真1枚目:GR GT(プロトタイプ)、同2枚目:GR GT3(プロトタイプ)

駆動方式はFR(後輪駆動)。軽量・高剛性を実現するため、トヨタ初のオールアルミニウム骨格を採用。GR GTでは、空力性能の理想像を定めてからデザインを検討するなど、クルマのパフォーマンスを高めるための技術が積極的に取り入れられている。

ハンフリーズCBO
So what do you think about these?
いかがでしょう?

 

The GR GT and its racecar sibling, the GR GT3, will be joined by the new Lexus LFA Concept here to form the sports car apex for both Lexus and GR.
GR GT。そしてそのレーシングモデルのGR GT3。それにLexus LFA Conceptが加わり、レクサスとGRの“スポーツカーの頂点”となっていきます。

All from one race-bred platform, true to GR’s promise of pushing the limits for better, contributing to the entire Toyota Group.
すべてはレースで鍛えたプラットフォームから“限界への挑戦”というGRの想いを体現し、トヨタのすべてのクルマに貢献していく存在です。

And all part of Akio’s promise of no more boring cars.
そして、章男さんの「もう二度と“退屈なクルマ”はつくらない」という誓いを果たすものでもあるのです。

ハンフリーズCBOは2台のスポーツカー開発に込めた想いを解説していく。

【GR GT3】ドライバーの能力を最大限引き出し、勝利を目指す人へ

ハンフリーズCBO
Now, the GT3 category, where the story of these three cars begins, is all about making cars for people who want to win--both professionals and also privateer racers.
GT3はプロでもプライベーターでも、勝ちたい人すべてに向けたカテゴリーです。

For everybody, it all starts with speed. Without speed, there is nothing.
スピードがすべて。スピードがなければ何もない。

 

For the GR GT3 racecar, with a 4-liter V8 twin-turbo engine, a rigid aluminium spaceframe, an incredibly low center of gravity, state-of-the-art aerodynamics--all the critical elements are in place.
GR GT3は、4リッターV8ツインターボエンジン、高剛性のアルミスペースフレーム、超低重心、最先端の空力、速さの要素をすべて兼ね備えています。

But speed in itself is not everything.
しかし、スピードだけがすべてではありません。

The race is much more than the home straight. And the real art is how you control that speed.
レースはストレートだけでなく、本当に大切なのは、そのスピードをいかに“制御するか”。

In a real-life situation, as our Master Driver, Morizo likes to say, it all comes down to kaiwa--the conversation between driver and car.
実際の走行では、マスタードライバー・モリゾウが言うように、大切なのは“会話”、つまりドライバーとクルマの会話です。

This GR GT3 is engineered to give you confidence in all situations.
GR GT3は、あらゆる状況でドライバーに“自信”を与えます。

To feel reassured by that conversation, even at the limits, in the severest of situations. It’s all about the feedback the car gives you to guide you in making split-second decisions.
極限の状況でも“会話”によって安心でき、瞬間的な判断につながる“フィードバック”を返してくれる。

Fluent communication, knowing how the car will respond so that there are no misunderstandings, bringing out the best in your abilities, so you can push the car and yourself even further.
クルマの動きが手に取るようにわかり、誤解がない。だからドライバーの能力を最大限引き出し、クルマもドライバーも、さらに前へ進める。

【GR GT】加速だけでなく、減速・ブレーキング時の音にもこだわり

ハンフリーズCBO
The GR GT speaks to both types of drivers--the professional driver and the recreational driver--whether that is two different people or you and your alter ego.
GR GTは、プロドライバーと趣味で走るドライバー、どちらの心にも響くクルマです。それが別々の人でも、 自分と“もう一人の自分”であっても。

GR GTの内装

Now, an integral part of any conversation with a car is sound.
そして、クルマとの会話の重要な要素が“音”です。

Not only during acceleration, but deceleration and braking.
加速だけでなく、減速・ブレーキングのときの音も。

To understand the importance of this, look no further than 30 minutes’ drive from here to Fuji Speedway and the transition from the home straight into the tight first corner.
ここから30分の(距離にある)富士スピードウェイ、ホームストレートからタイトな1コーナーへ飛び込むシーンを想像してみてください。

To brake as late as possible, deeper, faster, and power out with confidence following your ideal line.
できるだけ遅く、深く、速くブレーキを踏みこみ、理想のラインを取り、自信を持ってパワーをかけてコーナーを立ち上がる。

This may be the first time that we have focused not only on the sound a car makes when you put your foot down, but the visceral, guttural sound when you take your foot off.
今回初めて、アクセルオンの音だけでなく、アクセルオフのときも含めて“五感に訴えかける野性的な音”に徹底的にこだわりました。

But the conversation you have on an ordinary street is different.
しかし、街中での“会話”はまた違います。

The GR GT road car, with that same V8 twin-turbo but with hybrid power, shares the DNA of its racing counterpart more than any car we have ever made.
ロードカーのGR GTはレースカーと同じV8ツインターボに加えてハイブリッドを搭載し、これまでで最もレースカーに近いDNAを持つ市販車です。

For this, the team worked not only at the limits of a car but at the limits of the development process--production car test drivers working hand in hand with racing drivers.
開発チームは、クルマとしての限界だけでなく、開発プロセスの限界にも挑みました。市販車のテストドライバーとレーシングドライバーが“手を取り合って”開発しました。

This is a circuit-ready, everyday driver--wild on a track day, easy to drive around town.
これはサーキットでも走れる“日常のクルマ”。サーキットでは野生的に街中では扱いやすく。

Take it for a stint at the track and stop at a nice restaurant on the way home.
サーキット走行の帰りに、いいレストランに寄れるような、そんなクルマ。

From dynamics all the way down to minute decisions in seating position this is a car designed to cover all the bases.
走りのダイナミクス性能からシートの細かな調整まで、このクルマはあらゆる場面に対応できるようにつくられています。

スポーツカーの生産終了が相次いでいた、2000年代初頭のトヨタ。2代目スープラが02年、アルテッツァが05年、MR-Sが07年に終了した。

初めてのニュル挑戦は07年、トヨタを名乗ることができず、豊田会長もモリゾウとしてエントリーし、使用したクルマは中古のアルテッツァ。

ヨーロッパを中心とする開発中のスポーツカーに道を譲るしかなかったニュルブルクリンク。

そしてアメリカの自動車ジャーナリストに「レクサスは退屈だ」と言われた、ペブルビーチ。

2つの悔しさが、モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくりへとつながってきた。

ハンフリーズCBOは、Lexus LFA Concept、GR GT、GR GT3の3台を「“人間の限界ギリギリの走る喜び”を 次世代につなぐという決意の象徴」と表現する。

 

取り戻した“エモーショナルさ”

ハンフリーズCBO
Now Akio loves motorsports.
章男さんはモータースポーツを愛しています。

In a race team, there is no hierarchy. When it comes down to it, everyone is in the pits together.
レースチームには上下関係がありません。みんな同じピットに立つ仲間です。

 

These three cars will work as a team to bring the emotion of driving to both veteran racers and new generations of car lovers.
この3台のクルマは1つのチームのように、ベテランから若い世代のクルマ好きまで、あらゆる人に“走る楽しさ”をお届けする存在になります。

Whether it’s the V8 twin-turbo in the GR GT3 or the hybrid version in the GR GT, both running on either conventional fuel or e-fuel, or an electric future in the LFA, these cars represent a commitment to keep the joy of driving at the limits of human capabilities alive for the next generation.
GR GT3 V8ツインターボ、GR GTハイブリッド、そのどちらもガソリンとe-fuelに対応しています。そして電動車の未来、LFA。これらはすべて、“人間の限界ギリギリの走る喜び”を 次世代につなぐという決意の象徴です。

Nurturing technology and people to create a new era of driving euphoria--just as Naruse-san brought his wisdom from the Toyota 2000GT to the LFA and passed it on to a new generation of test drivers.
技術と人材を育て、“走る喜びの新しい時代”をつくっていきます。成瀬さんがトヨタ2000GTからLFAへ知見を伝承し、若手テストドライバーに伝えたように。

Ladies and gentlemen, over the last 14 years, not only Lexus and GR but all Toyota Group brands have undergone a transformation.
この14年間でレクサス、GRだけでなく、トヨタグループのブランド全体で大きな変化を遂げました。

The emotional side has come back to the company.
トヨタは“エモーショナルさ”を取り戻しました。

Whether that’s in terms of driving dynamics, engineering, production, or my field of design, there has been a fundamental change in the company mindset.
走り、技術、生産、そして私の分野であるデザインにおいても、会社のマインドセットは根本から変わりました。

How a car looks and how a car feels--it’s all subjective.
クルマの見た目、フィーリング、それらはすべて、人間の主観によるものです。

But in the pits, as one team with Akio as Master Driver, we have the license to do what needs to be done to translate each car’s story into reality.
マスタードライバーの章男さんとピットで一緒に過ごすことで、我々はどうやればクルマにストーリーを吹き込むことができるのかがわかってきました。

And even though he’s pushing 70, this year Akio Toyoda went back to where it all began 20 years ago, driving in the Nürburgring 24 Hours.
そして70歳に近づいた今年、章男さんは再び20年前すべてが始まったニュルブルクリンク24時間レースの場に戻りました。

And I can guarantee one thing:
1つだけ言えることがあります。

With these three cars in front of him, he will not be able to stay away for many more years to come.
この3台が目の前にあれば、章男さんはまだまだ 走り続けるに違いありません。

Equally, there was no way he could miss the chance to be here today.
そして、今日ここに来ないわけがありません。

Ladies and gentlemen, Akio Toyoda!
豊田章男の登場です!

 

ハンフリーズCBOの呼びかけに応じて、豊田会長がステージ中央へ。報道陣らの視線を一身に集める中、静かに語り始めた。

 

成瀬氏が残したもの、モリゾウの役割

豊田会長

 

30年前、成瀬さんと2人だけだったクルマづくり…。

少しずつ仲間が増え、やっとLFAができた時、成瀬さんは見たこともない笑顔でこう言いました。

「前だけを見てニュルを走れたのは初めてだ」

そう話してくれました。

抜かれた経験しかなかった我々が、やっと追い抜くクルマができた。

本当に嬉しかったんだと思います。

しかしその悔しさがすべて消えた訳ではありません。

量産とは言え、LFAは限定生産…。レースに勝っても、それはクラス優勝…。

前を走るクルマは、まだまだたくさんいました…。

「あなたたちに、こんなクルマづくりはできないだろ?」

あの悔しい声は、今も私の耳に残っています。

この悔しさは、間違いなく私の原動力です。

15年前、私はある日突然マスタードライバーを引き継ぐことになりました。

成瀬さんが私に残してくれた、クルマづくりの秘伝のタレは、あの悔しさだったんだと思います。

もう1つ残してくれたのは、その悔しさを共有できる数人の仲間たちでした。

 

私たちは、その悔しさを原動力に、もっといいクルマづくりを、ひたすら続けてまいりました。

GR86、GRスープラ、GRヤリス、GRカローラ、水素エンジン、スーパー耐久、ニュルブルクリンク…、そしてこのクルマたち…。

今のトヨタには、私と同じ想いでクルマをつくってくれる仲間が、こんなにたくさんいるんです!

仲間たちと、クルマづくりをしながら秘伝のタレを未来に残していきたい。
この仲間たちに、私はクルマづくりを託していきたい。

皆さま、どうかご期待ください。

ここで、会場からは大きな拍手が沸く。その拍手が止むのを待って、再び豊田会長が言葉を紡いだ。

マスタードライバー・モリゾウ
私の人生は闘いの連続でした…。

その中で見つけた自分の役割は“しんがり役”。

豊田章男の本当の姿は、社長でも会長でもなく、過去の闘いから仲間を安全に避難させ、未来の戦いに勝てるよう、もっと逞しくしていく…。

そんな役割だと思っております。

モリゾウは、まだ止まれない…! 倒れるまで走り続けます!

本日は、ありがとうございました。

 

WPが行われた12月5日、富士スピードウェイの通称「GR GTコーナー」では、新たな看板が設置された。

 

TOYOTA GAZOO Racingの新CMで流れるコピーは「THE SOUL LIVES ON.」。

「魂は生き続ける」という意味だ。

正解が見えない時代。継承していくのは技だけではない。思想・技・所作、そのすべてを次の“式年”へつなげていく。

GT3とは

GT3は国際自動車連盟(FIA)が定める、GTカーによるレースカテゴリーの一つ。

GTカーとは「Grand Touring(グランド・ツーリング)」の略称で、市販車(ロードカー。基本は市販のスポーツカー)をベースにサーキットでのレース仕様にチューンナップしたクルマ。これを使ってサーキットで競うレースを「GTレース」と呼ぶ。

市販車をベースにしているため、参戦するクルマはいわゆる“ハコ車”。500~600馬力。プロだけではなくジェントルマンドライバーも乗れるように安全性も高く設計されている。

日本を主戦場とするGTレースを「スーパーGT」と呼び、モータースポーツとしては国内で最も人気が高い。

GTレースにおけるGT3は、GT1、2の下位カテゴリーとして、参戦コストを抑え、すそ野を広げる目的で創設された。結果的にGTレースでは最も間口が広くなり、いまやGTレースの主流へと成長している。(現在GT1、2カテゴリーは、事実上実施されなくなっている)

GT3カテゴリーの最大の特徴は、市販のレーシングカーをベースにBalance of Performance(BoP、性能調整)が行われること。車種間の性能差を極力無くすことで公平性が担保されている。

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