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ウーブン・シティで起こす"カケザン" 増やす笑顔 オフィシャルローンチ

2025.10.08

「ウーブン・シティ、ローンチです!」

“マスター・ウィーバー”豊田章男 会長の声が響き渡った。

東富士工場の閉鎖時に明かした「実証都市」構想から8年。同工場の歴史と想いを受け継ぎ、自動車業界の枠を越えた多くの仲間たちとともに、テストコースの街がスタートを切る。

※本記事は、同日に公開したトヨタイムズ記事「ウーブン・シティに“帰省” 東富士工場125人に『おかえりなさい』」と合わせてご覧いただきたい。

実証開始となった9月25日、集まった報道陣は約90人。オフィシャルローンチイベントでは、加えて実証実験を始めるインベンターズ(発明家)、ここで実生活を送るウィーバーズ(住民・訪問者)らの姿も。

大勢が見守る中、プロジェクトをリードしてきた、ウーブン・バイ・トヨタ(WbyT)の豊田大輔シニア・バイス・プレジデント(SVP)がステージへ。ここまで尽力してくれた仲間への感謝と、この街での挑戦に対して決意を表明した。

Start the Momentum

豊田SVP

 

まだ誰も成し遂げたことのないウーブン・シティという挑戦に「この指とまれ」で集まってくださった皆さんに、まずは心から感謝申し上げます。ありがとうございます。

「順調に進んできたプロジェクトだった」と感じた方もいらっしゃるかもしれません。

実を言うと、決して順風満帆ではありませんでした。

このウーブン・シティの構想が始まったのは、トヨタ自動車東日本の従業員集会でした。

その場で当時の豊田社長が、会社の承認も何もない段階で、個人の想いとして「未来をつくる実験都市をやろう」と語ったことが、きっかけでした。

あの一言がなければ、こんなにも、いろいろな意味でドキドキするプロジェクトは生まれていなかったと思います。

正解のわからない中、模索を続け、一歩一歩進んできて、今日という日を迎えることができました。

数え切れないほどの壁がありました。

私自身も「本当にできるのだろうか?」と不安に思ったことも何度もあります。

そのたびに支えてくださったのは「For others―自分以外の誰かのために」、そして「Weaving the Future―未来を紡ぐ」という想いに共感し、最初の一歩を踏み出してくれた仲間たちでした。

ここに集まるウィーバーズ(住民・訪問者)、インベンターズ(発明家)、そして私たちと共に未来をつくる仲間の勇気が積み重なって、今日この瞬間があります。

ウーブン・バイ・トヨタのバリューに“Start the Momentum”、「一歩踏み出す」があります。

ゴールが見えていなくても、答えがわからなくても、「まずはやってみよう」と声を上げ、一緒に走り出してくれた皆さん。

その一歩一歩に、心から感謝しています。

みんなの「カケザン」

豊田SVP
そしてこれからのウーブン・シティに必要なのは、みんなの「Kakezan」です。

異なる分野、異なる文化が重なることで、新しいアイデアや価値が生まれます。その価値がまた次の価値を呼び、スパイラルのように広がっていく。私たちはそれを“Kakezan”と呼んでいます。

この街が、そんなKakezanを次々と生み出す場所になることを願っています。そして私たち自身がそのMomentum―原動力になっていきたいと思います。

 

ウーブン・シティは、過去から現在へ、そして未来へと受け継いでいく場所です。世代を超えて、人と人、想いと想いがつながりながら進化し続ける街。

そして、今日はゴールではなく、新たなスタートに過ぎません。

「自分以外の誰かのために」、「未来を紡ぐ」仲間として、これからも一緒に、この街から“Kakezan”を起こしていきましょう。

あらためて最初の一歩を踏み出してくれた皆さん、そしてこれまで支えてくださったすべての方に感謝したいと思います。

本当にありがとうございます!

最後に、この街で大切な言葉をもうひとつ。

健康第一!

皆さんも我々も健康あってのウーブン・シティです。

健康な体がないと、笑顔になれません。笑顔がないと笑顔の未来は紡げません。

健康第一で楽しく新しい未来を紡ぎましょう。

ありがとうございました!

ウーブン・シティには、1890年に誕生した「豊田式木製人力織機」の復元品がある。

これは、トヨタグループの礎を築いた豊田佐吉が、夜なべして機を織る母の仕事を楽にするために発明したもの。

ウーブン・シティに置かれている「豊田式木製人力織機」の復元品。

「数え切れないほどの壁」にぶつかりながらも、豊田SVPを支え、奮い立たせたのは、WbyT、ひいてはトヨタの源流にある「自分以外の誰かのために」という想い。

そんな想いに共感し、ウーブン・シティで未来を紡ぎだそうとするインベンターズは、この日新たにシンガーソングライターのナオト・インティライミさんが加わり20となった*。
*ナオト・インティライミさんのほかに、ダイキン工業、ダイドードリンコ、日清食品、UCCジャパン、増進会ホールディングス、インターステラテクノロジズ、共立製薬とトヨタグループ12社。

また、アクセラレータープログラム「Toyota Woven City Challenge―Hack the Mobility―」も始まっており、10月14日までインベンターズを募集中。WbyTでは、この街を使い尽くす発明家を求めている。

1,677万7,216

ただ、本連載でも以前触れたように、WbyTが大切にしている言葉の一つが「Weavers Are the Heart of Woven City(ウィーバーズはウーブン・シティに欠かせない存在)」。

この街で暮らす住民や訪問者もまた、未来を紡いでいくための大切な仲間。これまでインベンターズもウィーバーズも、安全安心に実証に参加できるように準備が進められてきた

 

そしてこの街で“マスター・ウィーバー”と呼ばれているのが豊田会長だ。

豊田会長によるローンチ宣言は次の通り。

豊田会長

 

皆さんこんにちは!

この街に引っ越してまいります、マスター・ウィーバーの豊田でございます。

マスター・ウィーバー? 私の理解は、世話を焼くのが大好きな、自称町内会長というところかなと思っております。

勝手に町内会長を名乗っている、近所のおじさんだと思っていただければと思います。

あと、やはりここは街というより、未来のためのテストコースです。そういう意味では、コースの管理人(でもあります)。管理人といっても「あれやっちゃダメ」「これやっちゃダメ」と言う人ではなく、「あれやってみたい」「これやってみたい」を、誰よりも大きな声で言う人かなと思っております。

よろしくお願いいたします。

さっき大輔も言っていましたが、ウーブン・シティで起こしていくのはカケザンです。

ナニ×ナニ。

掛け算は1社だけだと成り立ちません。最低でも2社必要なんです

ナニ×ナニ×ナニ×ナニ。

2以上だったら、いくらでも掛けることができます。ただ1を掛けても大きくならない。1じゃダメなんです。

だけど2でいいんです。

「Kakezan Invention Hub」。ここでインベンターズの製品やサービスを、住民やビジターに触ってもらい、そのフィードバックを開発に活かしていく。

皆さん「2」って言ってみてください!

――(インベンターズ、ウィーバーズら)2…。

もっと!2!

――(インベンターズ、ウィーバーズら)2!

そうです。笑顔になるんです。みんなで笑顔の「2」を掛けてまいりましょう。

 

最初の一歩を一緒に踏み出していただいたのは、7社の皆さんです。7回、2を掛けるといくつになるでしょう?

128です。(後ろのスクリーンに映った128を指して)ここに書いてあります。

ダイキンさんは花粉レスで2を。

ダイドードリンコさんは飲み物が出てくるだけじゃない、自動販売機で2を。

日清食品さんは未来の食べ物で2を。

UCCジャパンさんは未来型カフェで2を。

Z会(増進会ホールディングス)さんは、先進的な教育スタイルで子どもたちの2を。

インターステラさんは、夢を宇宙に飛ばして2を。

共立製薬さんは、大事なペットとの暮らしで2を。

さらに参画いただいたトヨタグループ12社も、がんばって笑顔の2をつくらせてもらいます。

さっきの128に、さらに12回2を掛けると…。

52万4,288。

さらにサポートいただくNTTやエネオス、リンナイ。見守ってくださっている矢崎総業。

そしてナオト・インティライミさんが音楽の力で、さらに2を。

全部で合計24回2を掛け算すると…

1,677万7,216。

 

これだけの笑顔が集まれば、きっとたくさんの共感が生まれます。そうしたらもっともっと仲間が増えていくと思います。

もうひとつ、忘れちゃいけない数字を掛けないといけません。

もともとここにあった、トヨタ自動車東日本 東富士工場の数字です。

累計の従業員数7,000人。生産台数752万台。これだけ掛けたら…。

こんな話をして何ですが、私数字弱いので、もうよくわかりません。

とにかくたくさんの、笑顔を紡げる気がしてまいりました!

皆さんどうでしょう?

(盛大な拍手と歓声)

ありがとうございます。では皆さん、笑顔でウーブン・シティのスタートを宣言したいと思います。

私が「2掛ける」と言いますから、それに続いて笑顔で「2!」と言ってください。

2掛ける…!

――(インベンターズ、ウィーバーズら)2!!

ありがとうございます!ウーブン・シティ、ローンチです!

Woven City is now officially launched!!! Thank you very much.

今回ローンチしたフェーズ1エリアでは、最終的に約300名の受け入れを予定している。

ここからどれだけの幸せが量産されていくのか。未来の当たり前を発明する挑戦が始まった。

【メディアとの質疑応答】WbyTはタグボート

この日は、多くのメディアに向けて、ウーブン・シティやWbyTに求められる役割などについて質疑応答も行われた。登壇したのは、WbyTの豊田SVP、隈部肇CEO、近健太CFOの3名。その一部も紹介したい。

――掛け算の成果はいつごろ、どんな内容を打ち出していきたいか?

豊田SVP

 

成果がいつ出るのか、正直わかりません。予想もしないような成果、アウトプットが出てくることもあると思いますし、そうではないかもしれません。たくさんの学びが出てくると思います。

成功、失敗というより、たくさんの取り組みができたかどうかが、最初に置かれる1つの成果になるんじゃないかと思っております。

そうしたトライをすることによって、学びが増える。それによって前に進んだり、方向修正をしたり、後ろに進んだり。

停滞するよりも、常に変化点があって動いていることが、最初のフェーズにおいては一番大事なんじゃないかと思います。

それを成果と表現するかわかりませんが、そういう考え方でやっています。

――ウィーバーズのフィードバックが重要とのことだが、どのように反応を吸い上げていくのか?

豊田SVP
どう評価をしていくのかが、非常に大事だと思っております。

私もテストドライバーとして、クルマの開発に参加させていただいていますが、大事なことはフィードバックのクオリティもそうですが、いかにフィードバックしやすいか。いかにハードルを下げるかが非常に重要だと思っております。

好き/嫌いだけでも、一歩目としては大事ですし、使う/使わないも十分フィードバックになると思っております。

また、そのフィードバックを得て改善したものをいかにハードル低く試せるようにするかが、ウーブン・シティにおいては大事だと思っております。

――(ウーブン・シティは、トヨタがモビリティカンパニーに変革していくためのタグボートという説明を受け)WbyTは一回トヨタをリセットして、ベンチャーとしてゼロからやる形じゃないかと思った。そうなると、今トヨタが持っている莫大なリソース、いろんなコネクションも使える。ベンチャーでありながら、大手と同じ手が打てる。すごく有利な戦いになる気がする。これは、うがった見方なのか、本当にそういう考え方があるのか。

隈部CEO

 

タグボート、まさに私たちの使命だと思っています。皆さんご存じのように、タグボートは大きな船が方向を変える(ためのもの)。大きい船はなかなか変わらない。

少しでも舳先を変えるために引っ張るのが(私たちの)ミッションです。適切な距離感で、トヨタの外にいて、いろんな新しい世界を見て「こっちがいいんじゃないか」「あっちがいいんじゃないか」と提案する。

完全にリセットするのか、部分リセットするのか、いろいろな状況があると思いますが、いずれにしても、引っ張っていくのが私たちの存在意義だと思っています。

“タグボート”については、近CFOもトヨタとWbyTの関係性に触れ、このようなコメントを残している。

近CFO

 

トヨタからの出向者は、タグボートをトヨタ(大きな船)に引っ掛ける“フック”の役割をしなくちゃいけないと思っています。

私も長くトヨタにいて、ウーブンにきました。(WbyTの)カルチャーを一番感じるのは、若手メンバーが、ものすごく情報を共有して仕事をする(ということです)。

同じ情報をみんなが共有しないと、アジャイルに仕事を進めることができない。そういう風土、会社のカルチャー、仕事の進め方が大きく違います。

ただ、タグボートがあっても、(大きな船が)動かないといけないので、我々の役割は、しっかりと“フック”をかける。

先ほど、全くリセットするのか?という話もありましたが、一部をリセットしながら、 一部を引っ張ってもらうようにしていくことも、すごく大事だと思います。

2025年1月25日に放送した、声だけのトヨタイムズニュースでは、豊田会長も「ウーブン・シティはトヨタや自動車産業の変革の先頭を走るミッション」「切り込み隊長みたいなもの」と話している。

世界でも類を見ないプロジェクト。ウーブン・シティとWbyTのこれからに、大きな注目が集まっている。

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