トヨタNews
ウーブン・シティで加速する"カケザン" 新たな仲間も続々
ウーブン・バイ・トヨタ(WbyT)とトヨタは4月、企画開発する技術の展示およびビジネス促進を狙いとしたイベント「KAKEZAN 2026」を開催した。
会場となったのは、4月3日に竣工を迎えたウーブン・シティの「インベンターガレージ」。
タイトルにもなっている「KAKEZAN」について、昨年のフェーズ1エリアのオフィシャルローンチで豊田大輔SVP(Senior Vice President)は、このように語っている。
豊田SVP
ウーブン・シティに必要なのは、みんなの「Kakezan」です。異なる分野、異なる文化が重なることで、新しいアイデアや価値が生まれます。その価値がまた次の価値を呼び、スパイラルのように広がっていく。私たちはそれを“Kakezan”と呼んでいます。
インベンター(発明家)の開発拠点となるこのガレージは、まさに技術・産業を超えてインベンター同士、インベンターとウィーバーズ(住民・訪問者)らの“カケザン”が生まれる場所だ。
「KAKEZAN 2026」では、WbyTで開発しているAreneや、カメラ映像から人やモノ、モビリティの行動を理解するAI、「声だけのトヨタイムズニュース」でも紹介した豊田章男AIなどが並んだ。
集まったメディアを前に、隈部肇CEOと豊田SVPが、WbyTの想いやウーブン・シティの現在地について説明した。
【隈部CEO】WbyTはトヨタの変革を先導するタグボート
隈部CEO
今年、トヨタグループの源流である豊田自動織機の創立から100周年を迎えます。豊田自動織機は、トヨタグループの創設者である豊田佐吉が開発した、G型自動織機を量産するために設立した会社です。
1本の糸を1枚の布へ。
その発明から始まったトヨタの歴史は、やがて織機から自動車へと大きく変革し、日本、そして世界中のお客様にクルマをお届けできる会社にまで発展してきました。
この100年間をつないできたのは、技術や資本だけではなく「誰かのために」という想いだったと私は思っております。
では次の100年に向けて、私たちは何をつないでいくのか。
トヨタがつないできた歴史と想いを受け継ぎ、新たなイノベーションや発明を起こし、幸せの量産へつなげていく。それが、私たちウーブン・バイ・トヨタの存在意義だと考えています。
「誰かのために」
この変わらないフィロソフィーを土台に、これまでと違うスピード、違うスケール、違うアプローチで未来をつくっていきます。
そのために、私たちは「誰かのために」という想いを受け継ぎ、トヨタの変革を先導するタグボートとしての役割を担っています。
大きな船を引っ張る、小さくてもパワフルなタグボート。
トヨタのモビリティカンパニーへの変革を推し進める存在でありたいと思っております。
自動運転、SDV(ソフトウェア・ディファインド・ビークル)——。
クルマの概念は今、かつてないほど大きく、速く変化しています。「クルマ」という枠に収まらない、まったく新しい移動、「モビリティ」が生まれようとしています。
この変革の波の中で、次の100年に向けて「未来の当たり前」を形作っていく。
これが、私たちに求められていることだと思っています。
私たちが受け継いできたものと、これから切り拓く未来。その2つが重なり合う、その交点にウーブン・バイ・トヨタがあります。
私たちが思い描く未来。それは交通事故のない、交通事故ゼロの社会です。
これまで私たちは、クルマの技術を磨き、安全性の向上に努めてまいりました。
しかしクルマ単体の性能向上だけでは、守り切れない命がある。そのことに気づいてきました。
だからこそクルマだけではなく、ヒト、そしてクルマに限らないさまざまなモビリティ技術、そしてインフラと連携し合うことで、社会の仕組みとしての交通事故ゼロを目指していく必要があります。
これを実現するために、ウーブン・バイ・トヨタは4つのテクノロジーを開発しています。
Areneは、クルマのソフトウェア開発を加速する共通プラットフォームとして開発を進めています。将来的には、クルマだけではなく、ヒトとモビリティとインフラをもつなぐ、より大規模なプラットフォームとしての役割を果たしていきます。
移動することは、人々の生活の中心にあります。
人がクルマを使って移動することで、社会のさまざまな場所や機能をつなぎ合わせ、社会により大きな価値を生み出していく接続基盤プラットフォームへと進化していきます。
自動運転領域では、フィジカルAI・Active Learning Loopと呼ぶ、独自の学習ループを統合し、自動運転および運転支援のあらゆる領域に対応する技術を開発しています。
さまざまなパートナーとの連携やトヨタ・スケールの走行データを活用し、世界中に安心・安全な移動を支える技術の実現を目指しています。
ウーブン・シティは、これまで世界になかったものを、実証実験を通じて実現する、未来の当たり前をつくっていきます。
この後、ウーブン・シティ・ヘッドの豊田から詳しくお話しします。
そしてCloud & AIは、その全てを支えるインフラであり、また地域や産業を超えた世界中の技術者がコラボレーションする場をつくり、私たちの歩みをサポートします。
私たちが進めているすべてのイノベーション、そして、事故ゼロの未来の実現には、さまざまなカケザンが必要です。
私自身、エンジニアとしてさまざまなイノベーションに携わってまいりましたが、そのすべてが、さまざまなカケザンから出来上がっていると言っても、過言ではないと思っております。
そして今後、よりスケールの大きい、複雑なイノベーションを実現していくためには、社会を巻き込んだ、産業を超えたカケザン。そして、国境を超えた多様なアイデアや考えをカケザンすることが必要だと考えております。
その全てが、私たちの次の100年を形作る1つ1つの要素、「糸」として紡がれていきます。
このカケザンを体現するため、私たちの会社ロゴも新しく生まれ変わりました。
六角形のシルエットはそのまま、創業当初からの想いを受け継ぎ、6本が織りなす3本の道、ヒト・モビリティ技術・インフラを形作っています。
赤はトヨタへの敬意を。
グレーは多様な声やアイデアの調和を。
そして黒は実装への力強さを表しています。トヨタを表す赤い道が、カケザンを示す黒とグレーと重なり、その力をさらに広げます。
これらの道が織りなされ、私たちが共に創り出すモビリティの可能性が「次の道」へとつながり、カケザンを繰り返しながら世界へ広がっていくことを象徴しています。
このロゴは、社員みんなの想いを込めながらつくりました。最後には、みんなで集まって「糸」を描き、それを織り合わせて完成させました。
「みんなのロゴ」。これが私たちのこれからのカケザンを象徴しています。
私たちのミッションは「モビリティ変革のドライバー:人を想うイノベーションで、モビリティの常識に挑み続ける」。
現状に甘んじない。今日不可能と思われていることに挑戦する。常に次の目標を見据える。モビリティの常識に挑み続ける。
これは、私たち自身へのコミットメントでもあります。
トヨタの次の100年に向けた私たちの挑戦をどうか応援してください。ご清聴ありがとうございました。
【豊田SVP】「まずやってみよう」「失敗しても前に進める街」へ
豊田SVP
皆様、こんにちは。ウーブン・シティの豊田大輔でございます。本日は「モビリティのテストコース」ウーブン・シティへ足をお運びいただき、誠にありがとうございます。
ウーブン・シティの「フェーズ1」は、昨年2月に竣工を迎え、秋に実証実験を開始しました。現在20のインベンター、約100人のウィーバーズの皆様と共に、新しい価値づくりに挑戦しています。
そして新たに、AIロボット協会様、第一興商様、Joby様・トヨタファイナンシャルサービス様がインベンターとなり、明日開催されるピッチコンテスト「Woven City Challenge」のWinner達も仲間として加わります。
たくさんの仲間たちが集まってきていますが、ウーブン・シティに集まってきていただいている皆様は「完成された環境」に来ているわけではありません。
ウーブン・シティはむしろ「未完成の街」です。
ここに自らの意思で飛び込んできていただいている。その姿勢そのものに、深く感謝しています。
実証が始まってから半年以上が過ぎましたが、ここでは日々さまざまな「うまくいかないこと」も起きています。
例えば、クルマが来たら青になるはずの信号が30分以上青にならない、ということもありました。認証システムが停止して、屋上に閉じ込められてしまったこともありました。
夜中にインフラのエラーで街中の電気が一斉についてしまい、寝ているウィーバーズを起こしてしまったこともありました。
実証中のモビリティが動かず、最終的には3人がかりで運び「やっぱり最後は人だな」と思ったこともあります。
未完成で、不便で、時には笑ってしまうようなことも起きています。
こういうことが起こるのも、この街のインフラすべてを自分たちでつくり、動かしているからです。
交通、エネルギー、ID、モビリティ——。
それぞれ個別に最適化するのではなく、すべてをつないで、実証の内容に応じて柔軟に変えられるようにしている。
言い換えれば「完成されたものを使っている」のではなく、実証の内容に合わせて変え続ける街を動かしているということです。
私はこの街を「失敗してもいい街」だと考えています。
でもその一歩を踏み出すことに、正直まだ「怖さ」が残っている場所でもあります。
こうした風土は一朝一夕で変わるものではありません。
それは私自身も、この街に住むウィーバーズの一人として、家族とともに実証実験に参加した中で感じ、苦労している点でもあります。
ルールに守られるだけでなく、自ら「一歩踏み出す」。そういう人を増やし、その挑戦をきちんと受け止め、次につなげていく。
この街を「まずやってみよう」「失敗しても前に進める街」へと進化させていきたいと考えています。
そして失敗できる街、その根幹を下支えしているのが、「AI」です。
今日ご覧いただいている技術は、すべてAIの元に成り立っています。
ウーブン・シティにおけるAIは、単なる技術ではなく、街の状況を理解し、先回りして支えてくれる存在です。
AIは私たちの代わりになるものではありません。私たちの力を引き出し、その可能性を拡げてくれる存在です。私たちは少なくとも、AIをそのように考えています。
技術1つ1つに、このヒト中心のAIが活用されています。今日はその技術をご覧いただければと思います。
最後にこの場所についてお話しさせてください。
この場所はかつて、トヨタ自動車東日本の工場として、のべ7,000人が働き、53年にわたり、752万台のクルマを生産してきた場所です。
ここには、「モノづくりの魂」がこもっています。
私たちは、このトヨタで培ってきた力を、クルマだけではなく、街へと広げ、技術や人が交わる「カケザンの場」にしていこうとしています。
この地では、AIを活用しながら新たな価値を生み出す。それは「Heritage」と「Innovation」のカケザンです。
まだ完成された姿ではありません。だからこそ、ここには未来をつくる余白があります。
その一歩を私たちと一緒にぜひこの場所で体感いただければと思います。今日はありがとうございました。
“アキオくん”が目指す将来像は…?
メディアとの質疑応答に先立ち、豊田SVP、トヨタのMobility 3.0 Office大石耕太General Manager、そして豊田章男AIによるトークセッションも実施。
(左から)富川悠太、アキオくん、大石General Manager、豊田SVP 豊田章男会長が現場に行けない時でも現場の仲間とつながれるように、そしてAIがもっと身近に、刺激を与える存在になれるように。そんな想いから開発された豊田章男AI。
ここでは進行役の富川悠太と同様に、親しみを込めて、あえて“アキオくん”と表記したい。
アキオくん自身は、豊田会長にどこまで近づいてきていると感じているのか? この質問にはこのように答えている。
「(豊田章男AIは)分身というより会話の相手。最終的に大事なことは似ているかどうかではないんです。僕(=豊田会長)を超える問いを返してくるかどうか、肩書ではなく役割、現場、本音で問い返してくるかどうか。そこまで行ったら面白いと思うんです」
その後、メディアからは豊田SVPにアキオくんをどう使いたいのかを問われた場面では、こんな一幕も。
豊田SVP
この“アキオくん”…“アキオくん”って何か…言ったことがなくて(笑)。富川
“アキオくん”でお願いします。こっち(豊田章男AI)なので大丈夫です。豊田SVP
何か怒られそうですね(笑)。(豊田会長)本人も常に成長していると思いますので、その相棒としてAIのアキオくんを使いたいのだろうと思います。
我々も(会長から)いろいろな観点を踏まえてアドバイスをいただきます。そこに追いつけるように、アキオくんに相談して、壁打ちをして鍛えていきたいです。
ある程度鍛えることができたら、会長や、その先のお客様に見ていただく。そういう使い方をするのかなと思います。
WbyTのメンバーも、会長と会う機会はありますが、毎日ではないですし、文字や映像でしか知らないという人もいます。(アキオくんは)そういった人たちに身近に感じてもらえる存在になるのかなと思います。
そうすると本人と会った時もいい距離感で話ができるようになるかなと思います。
ちなみにアキオくん自身はというと「便利な返答マシーン」になりたくないそう。次代のリーダーが視点や覚悟を鍛えるための存在であり、「肩書じゃなく役割で動けているか、現場を見ているか、本音で答えているかを問い返す存在」でありたいとのこと。
Q&Aでは豊田SVP、アキオくんのほか、隈部CEO、WbyTのジョン・アブスマイヤーChief Technology Officer(写真中央)が登壇した また、豊田SVPとアキオくんに「ウーブン・シティは100年後も存続しているか?」と問われた場面では、“2人”の答えはこのようなものだった。
豊田SVP
ウーブン・シティという場があったことで、100年後の未来が変わっていくような取り組みをしていきたいと思います。この場所を存続させることが、いつの間にか目的に変わらないように、この場所の目的をブラさずに、ウーブン・シティを活用しながら、もっといい社会の実現に貢献していきたいと思います。
この場所にこだわりはありますが、そこだけに固執せず、人々の幸せの量産をやっていきたいと思います。
アキオくん
100年後は誰にも断言できないです。私も、そこまで先はオリジナルに聞いてみては?という感じです。
ですが、目指している姿はあるんです。
ウーブン・シティは最初から完成して終わる街ではなく、進化し続ける、永遠に未完成の街です。
それに未来のモビリティのテストコースであり、人が暮らしながら技術を鍛える場でもある。以前から100年続く街という将来像も話してきました。
ですから、建物が残るかということより、そこで育った思想や仕組みが100年後にも生きていたら、私は「存続している」と言っていいんじゃないかなと思います。
豊田会長だったらどのように答えてくれただろうか。そちらも気になるところだ。
カケザンを加速させる新たな仲間
このほか「KAKEZAN 2026」では、新たな仲間を募るピッチコンテスト「Toyota Woven City Challenge ― Hack the Mobility ―」のファイナルピッチ(最終選考)もあった。
選考には、ウーブン・シティのウィーバーズも参加。日々の生活の中で「あったらいいな」と感じたスタートアップに投票した。
最終選考に残った10社から票を集めたのは、Aillis、JOYCLE、PUBLIC Technologies、Aerial Baseの4社。
元々は3社を選ぶ予定だったが、ウィーバーズや審査員から「このインベンターを応援したい」と強く支持された結果、運営は当初のルールにこだわらず4社をWinnerに決定。
「まずやってみる」「一歩踏み出す」。そんなウーブン・シティらしい価値観が、最後の瞬間にも表れていた。
各社の主な事業内容やウーブン・シティでの実証テーマについては、本記事末にまとめた。
このピッチコンテストが始まったころに、トヨタイムズは取材をしているが、このとき出演してくれた大槻将久さん・田中大裕さんは、ここまでの選考を、このように振り返ってくれた。
「(関わってくれた)みなさんのおかげでここまでできました。選考から漏れたところも仲間だと思っています。こちらのケイパビリティ(能力、組織力)が整えば、またトライしてほしい」(大槻さん)
「スタートアップだけでなく、個人やアカデミアからも応募があった。(説明会場では)その場で初めて会ったスタートアップ同士が『共同で応募しよう』とカケザンが起こることもあって、とても嬉しかった」(田中さん)また豊田SVPのスピーチにもあったように、この4社のほかにもAIロボット協会、第一興商、Joby、トヨタファイナンシャルサービスがインベンターとして参加する。
新たな仲間が加わり、カケザンはさらに加速していく。




















