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「戦いに勝つ力を」 仕入先との「チーム・トヨタ」でともに強くなる
世界中から700人超のサプライヤートップが集まった「2026 TOYOTA Supply Partners Convention」が3月25日、トヨタアリーナ東京(東京都江東区)で開かれた。
佐藤恒治社長、近健太次期社長がそろってステークホルダーの前で話すのは、2月のフォーメーションチェンジ会見以来。
2人は、長年にわたって築き上げてきたトヨタと仕入先との関係に感謝を示すとともに、厳しさを増す自動車産業の中で生き残っていくための覚悟を語った。
佐藤社長、近次期社長のメッセージを紹介する。
多様性こそが、もっといいクルマをつくる原動力
佐藤社長
本日は、TOYOTA Supply Partners Conventionにお越しいただき、誠にありがとうございます。
そして、皆様、トヨタアリーナ東京へようこそ!
このアリーナのコンセプトは「可能性にかけていこう」。スポーツから音楽、モビリティまで、多様な挑戦を後押しする舞台として、昨年、オープンいたしました。
私たちも、この「場」からエネルギーをもらって、ワンチームで挑戦を加速していきたい。そんな想いを込めて、今回、アリーナでの開催といたしました。
本日は、484社・733名の皆様にお越しいただいております。部品メーカーの皆様、設備や物流、建築を担う皆様、半導体や素材関連のパートナーの皆様、こうした国内外の多様な仲間が一堂に会しています。
この多様性こそが、もっといいクルマをつくる原動力であると思っています。
本日は、私たちの多様性を「可能性」に変えていけるように、未来への想いを確かめ合って、全員で、新たな一歩を踏み出す。そんな一日にしたいと思います。
昨年を振り返りますと、米国関税の問題をはじめ、事業環境は厳しくなる一方でした。
そんな中でも、未来に向けた取り組みを着実に進めてまいりました。
例えば、安全・安心なSDVの第一歩を踏み出した「新型RAV4」。
秋にオフィシャルローンチを迎えた「ウーブン・シティ」。
マルチパスウェイの想いを技術で形にした「カローラコンセプト」。
これらをはじめ、一歩ずつモビリティカンパニーのビジョンの具体化に取り組んでまいりました。
そして、ジャパンモビリティショーでは、会長の豊田(章男)のもと、トヨタグループが一体となって、5ブランドのビジョンを商品でお示しすることができました。
皆様のお力添えに心から感謝申し上げます。
また、生産面でも、皆様のご尽力に支えられた1年でした。
「いいクルマをしっかりつくって、しっかりお届けしよう」
多くの皆様がその想いを行動に移して、自然災害や生産変動、生産トラブルなどの変化点に柔軟に対応してくださいました。
各社での取り組みに加えて、仕入先様同士でも連携して、生産を懸命につないでくださいました。
ある仕入先様は、取引関係のない別のお会社が金型の破損で困っている…。そう聞いて、稼働停止を防ぐために、すぐに駆け付けて対応いただいたと伺いました。
6万社を超える仕入先様の現場で、こうした一つひとつのご努力、助け合いがあったからこそ、昨年は995万台のクルマをつくって、お客様にお届けすることができたのだと思っています。
心より感謝申し上げます。
「危機感」を全員の共通認識に
ここで、佐藤社長は表情をグッと引き締めた。伝えたのは、日本の自動車産業が置かれている現状についての危機感だった。
通商環境は不透明さを増し、地政学リスクも上昇。新興メーカーは、圧倒的な開発スピードとコスト競争力でお客様の支持を伸ばしている。
「気を抜けば、私たち日本の自動車メーカーは、すぐに足をすくわれてしまう」
佐藤社長は、こう話し、日本が勝ち残っていくための強みと課題について説明した。
佐藤社長
日本のモノづくりの強みは1社1社の専門性を活かした強固なサプライチェーンです。この強みは、何があっても守り続けるべきです。課題はスピードだと思います。
新興メーカーとのこうしたスピードの違いは、コスト競争力や新技術の導入タイミングの速さ、すなわち、クルマの商品力に直結していきます。
何もしなければ、この差は広がっていく一方だと思っています。
今のままでは、生き残れない。
まずは、この「危機感」を全員の共通認識にしたいと思います。
この先、厳しい戦いが待ち受けています。だからこそ、私たちは一体となって勝ち抜く力を高めていかなければなりません。
そのためには、徹底的に生産性を向上させていくこと、そして新しい価値を生み出す挑戦にしっかりとリソースを振り向けることが必要です。
まずやるべきことは「当たり前ができていない」そんな足元の課題を少しでも早くゼロにすることです。
「当たり前ができていない」。佐藤社長は、工場の稼働停止によってお客様をお待たせしていることへ悔しさをにじませた。
佐藤社長
依然として、多くのお客様をお待たせしています。稼働停止の要因の多くが、トヨタ・仕入先様双方での設備トラブルや品質の不具合によるものです。この2年間、サプライチェーン一体となって「人への総合投資」、現場力がしっかり発揮される環境づくりを進めてまいりました。
ここからは、結果につなげていくことが必要です。
1台でも多くクルマをつくるために、もう一段ギアを上げて、徹底的な品質のつくりこみなど、踏み込んだ努力をみんなでしていきたいと思います。
そのうえで、今までにないレベルの生産性を実現するためには「仕事の前提条件」を変える、すなわち「やめる」決断が必要だと考えています。
どの現場にも長年続けてきて「変えられない」と思い込んでしまっていることがたくさんあると思います。
トヨタでも、新しい仕事がどんどん増えている中で「念のため」「変えるのが不安なんだ…」、そんな意識が壁となり「やるべきこと」が積み重なっています。それにより、付加価値の高い仕事に時間を割けていない現場がたくさんあります。
例えば、一部の技術開発においては、過去の知見を活用して開発を効率化するそのツールであるはずの「トヨタスタンダード」が、いつの間にか「ルール」となり、膨大な「作業リスト」になっている。そんな現実があります。
この状況を変えていくために、項目一つひとつを精査して、技術の進化を踏まえた開発プロセスの合理化を徹底的に進めていきます。
さらに開発の上流から前提条件を変えて、ソフトウェアの種類やパワートレーンの組み合わせの数を大きく減らしてまいります。
現場に余力を生み出して、自分たちの技術力を徹底的に磨くことに、もっともっと時間を使っていきます。
これまでトヨタ側の現場、現物の理解不足ゆえ、仕入先の皆様に多くのご負担をおかけしてきたことがあると思います。
そのことを真摯に反省して、サプライチェーン全体で仕事の正味、生産性を上げるために、自分たちの行動を変えていきたいと思います。
クルマづくりのプロセス全体で、仕入先の皆様と一緒になって「変えるべき」前提条件がたくさんあると思います。
SSA*1やAREA35*2の取り組みでも、仕入先様の現場の声が品質の最適化や種類削減につながった事例がたくさんあります。
*1:Smart Standard Activity。トヨタが仕入先の困りごとに向きあって行う品質・性能基準適正化 特別活動。
*2:お客様のニーズを正しく把握して、仕様や部品の種類を適正化する活動。部品種類と部品を保管するスペースの35%減を目指す。私たちは、チームでクルマをつくっています。今一度、その意味を考えたいと思います。
現場で聞かれるこんな声。「トヨタさんのおっしゃる通りに…」
その言葉はもうやめましょう。
それぞれがプロ意識を持って、知恵を出し合って、お互いの仕事のやり方を見直していきましょう。
そのヒントは、必ず現場にあるはずです。
皆様と一緒に、現場の声にしっかり向き合って、行動につなげていきたいと思います。
提案力
佐藤社長
この先の戦いを勝ち抜くためには、専門性を活かした皆様の「提案力」が必要です。その力をしっかり発揮いただくために、まず生産性を徹底的に高める。そして、新しい価値を生み出す挑戦を加速して、それぞれがもっと強くなる。
そんな好循環を皆様と一緒につくっていきたいと思っています。
そのうえで、世界のライバルと戦っていくためには、産業規模でも、この好循環を生み出していかなければなりません。
サプライチェーン全体の競争力向上のためには、自動車メーカー同士、仕入先様同士での踏み込んだ連携も必要になってまいります。
さらに、新たなモビリティの社会実装を加速するためには、エネルギーやインフラなど、産業を超えた仲間との連携が欠かせません。
それぞれの会社で、そして産業全体で、生き残りをかけて戦い方を変えていく。
こうした取り組みを、スピードを上げて実行に移していくために、私たちトヨタは経営チームのフォーメーションチェンジを行います。
4月から社長を務める近は、トヨタに軸足を置き、私自身は産業に軸足を置いて、皆様とともに、トヨタと自動車産業の競争力向上に力を尽くしてまいります。
これまでも、これからも、私たちのブレない軸は、会長の豊田のもと皆様と一緒に取り組んできた「もっといいクルマづくり」です。
トヨタは、クルマ屋として技術力を磨き、仕入先の皆様は、それぞれの専門性を磨く。
モノが言い合える関係を大切にして、ともに新たな価値を追求する。
この両輪の関係をしっかり守り育てていきたいと思っています。
「未来はみんなでつくるもの」
この想いを1つでも多く実践に移して、もっといいクルマをつくり、クルマの未来を変える挑戦を加速していきましょう。引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。
ここまで語り終え、佐藤社長は「新たに経営チームのキャプテンを務める近より、今後の取り組みにかける想いをお話し申しあげます」と近次期社長をステージへ呼び寄せた。
近次期社長のやらなければならないこと
近次期社長
皆様、こんにちは。近でございます。本日はご参加いただき、誠にありがとうございます。
佐藤からもありました通り、トヨタのチーム経営のキャプテンを務めることになりました。チーム一同、精いっぱい努力してまいります。変わらぬご支援をいただきますよう、なにとぞ、よろしくお願いいたします。
私達を取り巻く環境は厳しさを増すばかりです。
決算数字などから「トヨタは安泰だ」と思っている方もいらっしゃるかもしれませんが、全くそんなことはありません。
トヨタの競争力基盤は明らかに弱くなっています。
リーマンショックの時、創業以来の赤字に転落し、たくさんのプロジェクトを止めざるを得なくなりました。
F1撤退、(GMとの合弁会社)NUMMI撤退など、当時社長だった豊田は、毎日のように、誰かが悲しむ、つらい決断をしておりました。
そして、こう申しておりました。
「急成長しても急降下すれば、多くのステークホルダーの皆様にご迷惑をお掛けする。良い時は、みんなが良いから大丈夫。悪い時こそ、サプライチェーンを支えるために踏ん張れる会社、そんな会社にトヨタをしたいんだ」と。
私は秘書として、近いところでその姿を見てまいりました。
だからこそ、今の私がしなければならないことは1つです。
仕入先の皆様をはじめ、トヨタを信頼してくださっている多くのステークホルダーの方々に、ご迷惑をおかけしない。
そのために、今の競争力基盤を立て直し「トヨタの強さ」を取り戻す。
それに尽きると思っております。
「ステークホルダーにご迷惑をおかけしない」。そのために「今の競争力基盤を立て直し『トヨタの強さ』を取り戻す」。こう語る近次期社長の念頭には、損益分岐台数の改善がある。
昨年の2026年3月期 中間決算発表の場では、上昇傾向にある損益分岐台数を課題に挙げ、先日の労使協議会(労使協)でも「収益構造の改善は『待ったなし』」と語っている。
その取り組みをどんな想いで進めていくのか。近次期社長自身がトヨタの原点を思い起こすきっかけとなったあるエピソードを紹介した。
豊田会長の教え
近次期社長
私は現在、ウーブン・バイ・トヨタに在籍をしております。外国人の同僚から、こう言われ、ハッとしました。
「トヨタほど、お客様や社会のためを思って、行動している会社はないじゃないか。そういう理念を持ったトヨタが絶対に勝たないといけない。そのことを、トヨタ自身が忘れているんじゃないか?俺はそれが一番頭にくるんだ」と。
そういう彼の言葉が、私に原点を思い出させてくれました。
「日本に自動車産業を興し、この国を豊かにしたい」という豊田喜一郎の志に共鳴し、クルマづくりに挑戦された、創業期の仕入先の皆様。
仕入先の皆様を前に喜一郎が、解体したエンジン部品を部屋に広げて「この中から、できるものを持って行ってください」と声をかけ「自動車は未知の世界。今までの織機や紡織の技術が役に立つかはわかりません。部品一つひとつから出発しなくてはなりません。トヨタとともに苦労を分かち合ってください」そう、お願いしたことから関係が始まりました。
これがトヨタのスタートなんだと、私は豊田から教わりました。
トヨタとは、トヨタ自動車だけのことではありません。
そして、日本だけのことでもありません。
我々のクルマづくりに関わってくださる世界中の仕入先の皆様とともにある。それが「チーム・トヨタ」なんだ。私は、そう教わってまいりました。
我々は、ともに勝たなければなりません。
私自身が現場に入り、苦労している一人ひとりの顔を見て、声を聴いて、彼ら彼女らだけでは変えられない、トヨタの仕事のやり方や仕組みを見直してまいります。
私自身が「これはやめる」と決断し、行動してまいります。
勝つためです。
皆様にも、徹底的に競争力にこだわっていただきたいと思います。グローバルで勝てるよう、強くなっていただきたい。そう、思います。
それが「チーム・トヨタ」の勝ちにつながる。私は本当にそう思っております。
上も下もない
近次期社長
「トヨタの大番頭」と言われた石田退三さんは「トヨタと仕入先様の関係は、どこまでも一心同体、血の通ったものでなければならない、いつのときでも共存共栄の精神を失ってはならない」という考えを持っていたと学びました。一方で、「仕入先様との協力一致は、決して、温情と甘えに基づく妥協の産物ではない」とも言っております。
お互いがお互いに、強くなるための行動を求める。そして、ともに強くなる。
そのような厳しい関係、開発や生産の現場においては上も下もございません。
本気・本音のコミュケーション、そして、私自らの行動で、皆様との信頼関係を築いてまいりたいと思います。
これからも、どうぞ、よろしくお願いいたします。
ともに強くなり、ともに戦いを勝ち抜く。本気・本音で向き合えるプロフェッショナル集団「チーム・トヨタ」を目指し、待ち受ける難局を乗り越えていく。
佐藤社長、近次期社長のメッセージの後には、仕入先とのQAセッションも実施された。そちらの様子は、後日トヨタイムズ記事で紹介する。













