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【衝撃】中学生とトヨタが自動運転で勝負!! AIでここまでできるのか...!

2026.01.29

夏休み終了2日前。人の少ない校舎に、数名の中学生が集まっていた。

 

パソコンには、難しそうな数式がビッシリ!取材する我々も声をかけづらいほど緊迫した空気が漂っている。

彼らの目的は、AI(人工知能)を駆使した自動運転ミニカーの開発だ。

 

壁にぶつかることなく、高速で駆け抜けていくミニカーたち。障害物はセンサーで読み取り、AIが走行ルートを決める。

プログラミングや機械学習など、本来は大学で学ぶようなことを中学生が実践したというから驚きだ。

余裕さえ感じさせる表情で、ミニカーを見守る中学生たち。

 

実はこの課外授業、トヨタの有志団体が主催するある大会の一環なのだ。

自動運転でサーキットを爆走

エンジニアを中心に、2万人以上のトヨタ社員が有志で集まる「トヨタ技術会(ト技会)」。その一部メンバーによって2019年から開催されているのが「自動運転ミニカーバトル」だ。

 

ラジコンを改造した自動運転のミニカーでレースをする大会だが、2025年は200人以上が参加。抜きつ抜かれつの“小さなモータースポーツ”に、会場では大きな歓声が上がった。

 

コーナーの白い路面。何かお分かりだろうか?

 

実はこれ、滑りやすい雪道を再現したもの。コースには3車線やオフロードなども設置され、あらゆる道の走破性もカギとなる。

 

自動運転のミニカーでも、道がクルマを鍛えているのだ。

大会は下記の2部門で構成されている。
・プログラミングやミニカーづくりの初心者に向けた「制限部門」
・トヨタだけでなくスバル、ダイハツ、タミヤなども名を連ねる上級者向けの「無制限部門」

年齢や性別もさまざまな参加者が個人、もしくはチームで1台のミニカーを製作。自動運転のプログラミング技術を競う。

 

2024年までは、ト技会が毎年開いている親子向けイベント*内の一企画として実施していた。
*とよたものづくりフェスタ実行委員会とト技会が共同開催する「わくわくワールド」。子どもたちにものづくり体験を提供するイベントとして、2025年までに22回開催。

しかし、2025年は独立した大会として開催。会場も変わり、参加者がより競技に熱中できる環境を用意した。

ミニカーとはいえ、実際の自動運転にも通じる技術

ト技会 企画委員 横村幸大

 

この大会の目的は「技術研鑽」と「人材育成」です。学生には、自分の手でクルマを動かす楽しさ知ってもらい、エンジニアを志すきっかけになれば嬉しいですね。

カメラやセンサーで障害物を検知し、AIやプログラミングを駆使して、最良のルートを走らせる。ミニカーとはいえ、実際の自動運転にも共通する技術です。

AIやプログラミングの素養は、今やクルマづくりには不可欠。だからこそ若い世代には、楽しさや熱中と共に、エンジニアを志すきっかけを届けたい。そして、自動車産業の未来を盛り上げていきたいです。

中学生だけではなく、高校生も参加するこの大会。豊田西高校(愛知県豊田市)の大島幸也さんは、普段からAIや自動運転の研究をしているという。

豊田西高校 大島さん

 

どれだけAIやプログラミングを精巧につくり込んでも、実際にクルマを動かす際は、わずかな光や摩擦で想定がズレてしまう。そこに面白さを感じました。

将来、AIやプログラミングに関わる仕事をしたいと思っていますが、その思いが強まりました。

ト技会の横村は「未来のエンジニアを育てるために、子ども騙しのイベントにはしたくない」と話す。

だからこそ予選開始の数カ月前から、学校への出張授業を実施。単なる思い出づくりではなく、知識を深める研鑽の場にしようと懸命に取り組んでいる。

 

「若い世代が、大人と本気でぶつかり合える。そんな場をつくりたい。そして大人を打ち負かして欲しいとも思っています(笑)」。

日本の女性エンジニアの割合は20%以下といわれている。大会には女子大生も参加しており、未来の技術者となるかもしれない。

とはいえ、中高生に自動運転の開発は難しくないのだろうか。AIを駆使して大人と本気で対決。その結果は…!?

 

理想通りにいかない。だから学びになる

愛知県蒲郡市にある学校法人海陽学園 海陽中等教育学校(以下、海陽学園)では、2023年以降、1年生にト技会による出張授業を毎年開催している。

当初は20人ほどの希望生徒のみ参加していたが、2024年は約60人に増加。2025年は学校側の要望もあり、約80人の全1年生に実施。

記事冒頭の中学生も学園の生徒だ。

 

授業の後、さらに深く学びたいという生徒に向けては、夏休みに追加講座を開催。そして「自動運転ミニカーバトル」の予選にも参戦し、大人たちに本気で勝負を挑んでいるのだ。

 

これらの講座は学校側からの希望で行われている。

海陽学園 西村英明校長

 

海陽学園では「次代のリーダーを育成する」という精神のもと、STEM教育にも注力しています。

科学(Science)・技術(Technology)・工学(Engineering)・数学(Mathematics)の総称で、自動運転ミニカーバトルはEの「エンジニア育成」の一端です。

エンジニアリングは、理想通りに進むことのほうが少ない。机上の計算で完結せず、製品を動かすために四苦八苦し、仲間との意見交換が必要になります。

 

「すでにある正解を探す」のではなく「正解をつくり上げる」。その楽しさや、うまくいかない時の悔しさも感じてほしいと考えています。

 

そして2025年10月、大会予選が開催された。中学生たちは大人のエンジニアに勝ち、決勝へ進むことができたのだろうか。

悔しさが、未来の楽しさをつくっていく

11月16日の決勝戦。会場に海陽学園の生徒たちの姿はなかった。残念ながら勝ち進むことができなかったのだ。

予選で敗退した中学生たちは「プログラムの調整がうまくいかなかった。悔しさもあるけど、楽しかった」と、肩を落としながらも笑顔で前を見ていた。

 

2025年の大会は、ビギナー向けの「制限部門」ではトヨタが。上級者向けの「無制限部門」ではスバルチームが優勝。

 

スバルチームからは「今日は新人たちも連れてきている。技術的な刺激をもらえて人材育成のいい機会になりました」との声が。

ト技会の横村はこう締めくくる。

ト技会 企画委員 横村
大人も子どもも、同じ土俵で真剣に闘う。学生も巻き込んでクルマづくりのファンを増やし、自動車業界の未来を盛り上げていきたいです。

そのためには何が必要か。我々ト技会が試行錯誤することが、自分たちの学びにもなっていくと考えています。

 

優勝できなかったメンバーは、全員が悔しいはずなのに、誰もが笑顔になっていた。

 

その悔しさや笑顔こそが、クルマの未来を一層楽しいものへと変えていく、かけがえのない原動力なのだ。

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