

そして迎えた決戦の日。
背負っていたのは、自分たちの誇りだけではなかった。
トレーナーの教え、仲間たちの声援、その全てを力に変え、二人は競技に臨んだ。
練習で培ってきた連携が、最高の形で発揮される。上田選手が口にする「OK」という短い応答。それに呼応するように、松岡選手は相手の動きを読んで作業を進める。
3ヶ月という時間が築き上げた信頼が、二人の動きを淀みなく繋いでいった。
「やりきった」
競技を終えた彼らの胸には、澄み渡るような充実感が満ちていた。
そして発表された結果は、「金賞」。
その吉報は、二人の3ヶ月間の努力が報われた瞬間であり、同時に、彼らを信じ、支え続けたチームの喜びが爆発した瞬間でもあった。
しかし、栄光の余韻に浸る間もなく、彼らの視線はすでに次を見据えている。取材の最後に、今後の目標を尋ねると、驚くほど実直な言葉が返ってきた。
「体が続く限りは、ずっと現場で働きたいなとは思います」
と語る上田選手。
「整備士としてずっと続けていけたらいいなと思います。その中でも、トップクルーなどを取って、活躍していきたいなと思ってます」
と続く松岡選手。
彼らが帰る場所は、特別なステージではない。
お客様が待つ、いつもの現場だ。金賞という勲章は、ゴールではない。
それは、彼らの技術力の証明であり、お客様の愛車を生涯守り続けるための、通過点に過ぎないのだ。
上田洋輝選手、そして松岡航太選手。
広島には、こんなに熱い男たちと、彼らを支える温かいチームがある。
もしあなたの車の整備を彼らが担当することがあれば、思い出してほしい。
その手の向こうには、日本トップレベルの技術と、それを育んだチームの誇りがあるということを。